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刺し面は速い?

 高校生ぐらいまでの剣道の試合は、スピード勝負になりがちですから、刺し面が結構有効だったりします。実際この時期に大きく振りかぶって打とうものなら、なかなか試合では勝てません。

 でも、実は「刺し面」って、打っている本人が思っているほど速い打ち方ではありません。逆に受ける側にすれば案外見切りやすい面打ちだったりします。

 「刺し面」の打ち方というのは、剣先が最短距離で面に伸びてきて、当たる瞬間に手首手で小さく振り上げられてパシッと擦りあげるように打つやり方です。

 確かに剣先だけを見ているととても速く感じますが、面打ち動作全体の速さというのは剣先の動きよりも足の動き、つまり左足で蹴って右足で着地するまでの時間によって決まります。大きく振りかぶろうが小さく振りかぶろうが、脚力が同じならば面打ち動作にかかる時間は同じ訳です。

 ですから相手の足を見ていれば(実際は相手の重心の動きを見てるんですが)、打ち込みの始動時期はすぐに分かります。

 この始動時期さえ分かれば、刺し面は剣先が真っ直ぐ面に向かってくるのですから、最初から面打ちに来ることがすぐに分かってしまうので見切りやすいのです。

 逆に始動と同時に剣先が高く振りかぶられるとその剣先がそこから面に落ちてくるのか小手に落ちてくるのかぎりぎりまで分からないので避けにくくなります。

 でも、実際には「大きく打ちなさい」と言うと動作が遅くなってしまう人がほとんどだと思います。

 なぜなのでしょう?。

 これは、振りかぶるとき右手で振りかぶっているからなのです。

 右手を大きく振り上げると、人間の身体の構造上?、左足が前に出ようとしてしまいます。普通に歩くとき、右手を前に振り上げれば自然に左足が出てきますがこれと同じことです。

 ですから右手で振りかぶると、意識しなくても左足がほんのちょっと出て、それから右足を踏み出すという動作になってしまいます。つまり左足で蹴って右足を踏み出すのが面打ち動作の始動期だとすれば、それより先に右手を振り上げてしまって、それから飛び込んでゆくのですから動作が遅くなるのは当たり前です。

 つまり二足一刀の打ち方になってしまっているのです。

 一足一刀で面を打つためには、右手を振り上げるのではなく、左手を押し下げるような意識を持ちます。

 押し下げるという言い方はちょっと誤解を招くかもしれませんが、ようは右手は動かさず左手を前方に突き出します。こうすると竹刀が起きて立ちますね。

 また、左手を前に出すとやはり歩くときと同じで、その左手に連動して右足が自然に踏み出されるはずです。

 そして踏み出された右足が着地すると同時に出した左手を強く引き、反対に右手は相手の顔面に向かって真っ直ぐ突き出します。

 左手を引き、右手を前に突き出すという動作をすれば、これに連動して左足が前に出ようとします。これが左足の引きつけ動作です。

 この方法だと打突と同時に左足の引きつけが行われますから、左足が残って身体が開いてしまうような面打ちにはならないはずです。

 この打ち方のほうが、刺し面より遙かに速く強く打てると思います。そして本人たちが意識しているかどうかは別にして、全日本レベルの選手たちはみんなこのような打ち方をしているはずです。機会がありましたらビデオかなんかでチェックしてみて下さい。

 ただし、上記の打ち方もまだ競技剣道的な打ち方の域でしかありません。ある程度稽古を重ね段位も上になってきたら、より本来の剣道らしい打ち方に移行して行かなければなりません。

 そこで、先ほどまでは固定するとしていた右手を、左手の動きを妨げない範囲内で額のあたりまで上げられるよう練習します。

 つまり左手を前方に突き出して竹刀を起こす際に、右手の方は額のあたりまで持ってくるわけです。このとき少しでも右手に意識が偏って「振り上げる」という感じにならないようにします。振り上げるよりなら動かさない方がましです。

 左手に連動して自然に右手が額のあたりに持ってこられるという感じが理想なんですが、この辺の感覚がなかなか難しいのです。

 右手が額のあたりまで上がるようになってくると、剣先の軌跡が高く大きくなりますから、打つというより切るという太刀筋に近くなります。

 この額のあたりに上げた右手を右耳のあたりに持ってくれば、八相からの打ち込みに、左手を話して右手だけで打ち込めば、正二刀からの大刀の打ち込みに変化するんですが、その話はまた別の機会にでも。