[1]美しい着装

着装で身体のバランスチェック

 打突の威力やスピードを高めるために筋力トレーニングをする人は多いと思います。

 確かに基礎的な筋力を鍛えることは大切ですが、剣道における打突動作というのは全身を使った総合運動です。長年一刀の剣道を続けてきた人や普段の仕事や生活などで不自然な姿勢を強いられていると身体の骨格のバランスが狂っていることが多いものです。

 バランスの悪い身体は足回りが狂ってハンドリングが不正な車のようなものです。どんなに筋肉を鍛えてエンジンパワーを高めてもハンドリングが悪くては車は速く走れません。

 身体のバランスを気遣うようになると、稽古着や袴の着装にも気を配るようになるものです。着付けの後には鏡に向かって着装や身体バランスをチェックする習慣をつけて、常に正しい姿勢を意識すると剣道の上達も早いでしょう。

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着装のコツ

 和服は背中で着るものと言われます。和装の美しさはすっきりとした背中のラインです。ですから、剣道の稽古着をきれいに着るコツは、背中にしわを作らないように着ることです。

 そのためには稽古着の左右の前身頃を思いっきり前に引っ張って背中にしわができないようにしながら深く重ねます。そしてそのままの状態で帯を締め、帯を締め終わってから稽古着の裾を引っ張って整え、最後に前紐を結びます。

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帯締めの習慣をつけよう

 剣道の場合は、稽古着に帯を締めない習慣の人が多いようですが、帯を締めると着装がきれいになるばかりではなく、腹や腰を引き締めて安定させます。

 絹の角帯は非常に高価ですが、武道具店に行くと手頃な居合帯を売っいますので、ぜひ帯締めの習慣を取り戻して下さい。

 袴下に結ぶ帯の結び方は、一般には「一文字」ですが、この結び方は結び目が出っ張ってしまいます。もちろん、この出っ張りが袴の腰板の下部を若干持ち上げて、袴独特の前下がり後ろ上がりの美しいシルエットを作るのですが、剣道の場合は、この出っ張りが少々危険になります。

 ちょうど脊椎の位置に結び目が来てしまいますので、万が一稽古中に真後ろに転倒して腰を打ったりした場合に、脊椎を損傷してしまう可能性があります。

 このため、剣道の稽古時には帯を締めない習慣になったとも聞いています。

 特に昔は、子どもの場合には大人と違って角帯ではなく兵児帯を締めてました。この帯をそのまま剣道の稽古の際にも締めさせると、蝶結びにして背中に大きなコブができてしまいます。これが危険なため、剣道の稽古では子どもには帯を締めさせないようにしたようです。

 ただ、子どもと違って大人の場合は、たしなみとしても、また腰の安定のためにも帯(角帯)を締めた方がよいと思います。

 そもそも袴はズボンのようには袴の紐を腹に締めて履くものではなく、着物に締めた帯に取りつけるものです。ですから、和装において帯を締めずに袴を履くのは、エリのないTシャツにネクタイを締めるような違和感があります。

 背中に出っ張り(コブ)ができない角帯の結び方としては、「片ばさみ」をお薦めします。この結び方は、俗に「浪人結び」とも呼ばれ、時代劇に出てくるお侍さんが着流しでいるときに、後ろの結び目が八の字のようなっている結び方です。

 ※参考 角帯の結び方/片ばさみ(浪人結び)・・・男の着物大全より

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用具の取り扱い

 剣道具は、剣道を稽古するとき、身体の重要な部分を守って、危害を防ぐものです。そのような大切なものですから、着けたりとったりするときは、ていねいに確実に取り扱い、変形しないよう、長く使用できるよう注意しなければなりません。

 1,面などは汗をよく拭き取っておく
 2,小手は変形しないように、内革をよく伸ばしておく
 3,ときどき日光に当てて消毒する
 4,直接皮膚に当たる部分は、ときどきアルコールで消毒する。

などの手入れが大切です。

 また事故防止と外観上からも、破れは早く修理します。ひもなどが切れないように用心して調べておきます。

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用具の付け方

 剣道具の着装はすばやく、確実に行います。
 稽古中や試合中に脱げたり、緩んだり、解けたりしないようにしっかりつけることが大切です。

 防具を着ける場合は、どの部分もしっかりと結び、途中で解けたりしないように心がけることがまず大切です。慣れないうちは、濡れ手ぬぐいなどで結び目をやや湿らせてやると解けにくくなります。

 防具着装の注意事項を、着ける順序に説明します。

1,垂
 ①大垂の中央部分を真ん中にし、垂れ帯は下腹部にあてます。
 ②ひもを後ろで交差し、袴の腰板の下部)、腰骨の上から中央の大垂の下
 で結びます。

2,胴
 ①身体の真ん中に正しく着けます。
 ②十分にあげて、上ひも(長い紐)は、背中で交差して、胸の前、乳革に
 結びます。
 ③上がりすぎると、喉や脇の下を圧迫し、動作が鈍くなり、胴と垂れの間
 に隙があり、危害を受やすくなります。逆に下がりすぎると脇の下があく
 ので危険です。
 ④下の紐(短い紐)は、ほどけやすいので、特に注意してしっかり結びま
 しょう。

3,面
 ①手ぬぐいで頭部を包みます。
 ②両手で面の頬部を持ってあごを内輪に入れて、次に額部を入れます。
 ③紐は後頭部のやや下で交差し、前にまわして面金の下部で交差させ、
 もう一度後ろにまわして、再び前にまわして面金の最上部で交差させ、
 頭頂部で結びます。■ ④紐の長さは結び目より40センチ以内とします。
 ⑤紐を面金の下部につけている場合は、後頭部で交差させて面金の上で
 交差させ、以下同じです。

4,小手
 ①肘布団(筒)を持って、左手からつけます。
 ②拳の入る部分を持って脱着すると、その部分が変形するばかりでなく、
 破損しやすいので注意しましょう。

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