[3]二刀流のすすめ

こんな人は二刀をやろう

 二刀流は、宮本武蔵のような体力・体格に恵まれ、なおかつ天性の才能を持った人でなければ使いこなせないというのが定説です。

 しかし、武蔵が提唱した二刀流は、誰もが自ら持つ能力を最大限に発揮できるようになるための訓練方法としての二刀流です。

 言い換えれば、「誰でも二刀の修練を積むことによって、それぞれが持つ能力を最高に発揮できるようになる」というのが、武蔵が伝えようとした「二天一流」の真意です。

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脚力・腕力・体力に自信のない人

 二刀流は、片手で剣を扱うのだから、腕力や体力がないと出来ないものだと考えられがちです。しかし、片手で剣を扱うのに、さほど腕力は必要としません。

 居合では、全て抜き付けを片手で行います。つまり鞘から刀を一瞬に抜いて敵に斬りつけるという動作を片手で行っています。これは、体力や腕力のない高齢者や女性でも、稽古によってかなり素早い抜き付けが出来るようになります。

 また、二刀の構えは防御に優れるため、一刀の場合よりも近間に入り込んでの打突が可能です。つまり、脚力のない人にとっても、二刀であれば打突の機会が広がります。

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右手打ちのクセが直らない人

 「右手打ちのクセを直しなさい」
 「右手の力を抜きなさい」

 などとと指導される人は多いと思います。一般に右利きの人は、どうしても右手の力に頼った打ち方をしてしまい、それが剣道の上達の妨げになっています。

 実は、右手打ちの人は、単に右手の力が強いというだけではなく、左手の使い方が分からない、あるいは左手に意識が向いていないということが多いものです。

 一刀における左手の役割は「攻め」です。左手で敵の中心を攻めて、ここぞというときに右手の力を借りて打つのです。この「攻め」と「打ち」の役割を分かりやすく学ぶのが正二刀の構えです。

 正二刀で、正しい攻めと打突ができるようになると、一刀の技術は格段に進歩します。

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打ったとき左足や左腰が残る人

 打突時に、左足の引きつけが遅れたり、左腰が残った半身姿勢になってしまう人も多いようです。これは、体幹の使い方が間違っているからです。

 しかし、一刀の場合は、両手で一本の竹刀の柄を握って打突するため、打突時に左腰が残ってしまっても、柄を握った左手が右手に引っ張られて、上半身に左腰や左足の遅れが伝わりません。そのため、自分自身で半身打ちになっていることに気がつかないでしまっていることも多くあります。

 こういう人は、二刀を執って片手での打突を行うと、それがバランスの崩れとなって顕著に現れます。そこで、このバランスの崩れを矯正するような打突姿勢を学んでゆくと、自然に一刀の打突姿勢も良くなってきます。

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間合がうまくつかめない人

 一刀中段同士の稽古を見ていると、互いに自分と相手の剣先にばかり注視して、その剣先の交わり具合で間合を測ろうとしている人を多く見かけます。

 しかし、彼我の間合は、剣先で測るのではなく、相対的な距離感をもって見極められるようにならなければなりません。

 大小、長さの違う二本の剣を同時に扱う二刀は、間合の見極めが非常に重要になります。二刀で間合の基本とその妙味を覚えると、一刀の間合は、格段に見極めやすくなります。

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攻めや中心の取り方がよく分からない人

 一刀中段同士の稽古では、なかなか攻めの概念をつかむのが難しいようです。なぜなら、一刀同士では、往々にして「攻め」がなくても、脚力・腕力・瞬発力に優れた者が、偶然の打突を決めてしまうことが多いからです。

 しかも、これを「攻め勝った」と勘違いしてしまい、剣道とはそういうものだと早合点してしまいます。これでは、いつまで経っても「攻め合い」を主体とした本当の剣道の醍醐味を味わうことは出来ません。

 防御の固い二刀の構えは、攻めて崩すという理合を覚えて、それを身につけなければ容易に打ち崩すことが出来ません。二刀を学ぶということは、一刀ではなかなか覚えられない「攻め」ということの理論を基本から学び直すことでもあるのです。

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昇段審査を通らずに悩んでいる人

 武蔵会には、私と同じように、二刀で全剣連の昇段審査を受けて合格した会員もおります。しかし、あえて二刀にこだわらずとも、一刀で昇段審査を受け、それで合格した人も数多くいます。

 二刀の修練をすると、これまで述べてきたように、一刀の時のクセが抜けて、左手の攻めが効いた構えで、打突の姿勢が良くなり、間合や攻めにも明るくなりますから、昇段審査の合格率も高くなります。

 特に、昇段審査になかなか受からないという場合には、その人の剣道修練の方向性が間違っていて、大きな回り道をしているという場合が多々あります。こういうときこそ、二刀という全く別の視点で自分自身の剣道を見つめ直してみることも必要です。

 二刀を始めてから、それまで行き詰まっていた自身の剣道観がとても明るくなって、剣道の稽古自体がものすごく楽しくなったという会員が大勢います。

 ぜひ二刀を始めてみましょう。

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